1️⃣ ポリッシャーとは?
ポリッシャーとは、モーターの力でフロアパッドやブラシなどを回転させ、「床表面の洗浄作業」または「床ワックスの剥離作業」を行うための清掃機械です。フロアメンテンスに欠かせないビルメン現場の定番マシンで、広範囲の洗浄作業を効率的に行うため、人の力(デッキブラシや隅擦りパッド)を使う代わりに利用されています。
洗浄幅、回転速度、そして洗剤タンク、密閉(防滴)加工のオプション等、多彩な組み合わせ・仕様があるポリッシャー。その中から用途に応じて最適なものを選ぶことができます。
また最近では、一般的なディスクタイプ(円形回転式)に加えて、横振れがないオービタルタイプ(振動/揺動式)のポリッシャーのラインナップが豊富になり、初心者でも扱いやすい機種が増えてきました。オービタルタイプは洗浄効率・洗浄効果アップに繋がることで、熟練者にとっても利便性の高い、新しい形式のフロアマシンです。
ポリッシャーに関するよくある間違いに、車用ポリッシャーの用途「磨き」と混同し、タンクに床用ワックスを入れてしまうことがあります。床用ワックスの塗布はワックス塗布用モップを使って手作業で行います。床用ポリッシャーのタンクは洗剤(希釈液)を入れて利用するものです。
ポリッシャーは主に洗浄用途で使われていますが、石材床の研磨作業にも利用されています。また主成分が蝋(ロウ)の水性ワックスを塗りのばすためにも床用ポリッシャーは利用されてきましたが(その際に使用するのはシダブラシ)、前時代的なそのメンテナンス方法は今では一般的ではありません。
現在主流となっている床メンテナンス方法は、塗布して乾燥させるだけで光沢が出る樹脂ワックスを使用する「ウェットメンテナンス」と呼ばれるものです。このウェットメンテナンスに欠かせないのがポリッシャーで、定期的に樹脂ワックス表面の洗浄やワックス剥離作業を行うために利用されています。
これに対し「ドライメンテナンス」という、幾層にも塗り重ねた専用ワックス表面を磨き「塗膜を強化して光沢度を保つ」一歩進んだ床メンテナンス方法があります。そのドライメンテナンスの磨き作業には、ポリッシャーではなく約10倍の速度で回転するバーニッシャーを利用します。ただし手間とコストが掛かり熟練が必要なドライメンテナンスは、初心者にはお勧めできません。
2️⃣ ポリッシャーの選び方
大きさ、回転速度、オプションなど種類がとても多いポリッシャー。自分に適しているのがどのポリッシャーか分からない初心者を優しくナビゲート。最適なポリッシャーを見つけてみよう!
2️⃣ - 1️⃣ まずは回転部分の大きさ(清掃幅)を決める
ポリッシャーの大きさは使用する場所や用途に合わせて最適なものを選びます。通路の広さや什器の有無などを考慮して、一般的なサイズの12インチを基準に、狭い範囲なら8インチ、逆に障害物のない場所で使用するなら、作業効率を上げるため14インチ、15インチ、17インチを選ぶのがよいでしょう。
※1インチ ≒ 2.54cm(13インチ:約33cm、15インチ:約38cm)
※フロアパッドを選ぶ際に必要なエプロン外周サイズも併せて記載しています
※ここでは一般的なディスクタイプ(円形回転式)ポリッシャーについて解説しており、オービタルタイプ(振動/揺動式)のポリッシャーを含んでいません
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8インチ(エプロン外周サイズ9インチ)
一番小さいポリッシャーで、狭い場所や障害物の多い場所に最適。伸縮タイプには大型の取手が付いており階段の洗浄にも使用できます。密閉タイプや洗剤タンク付きも選べます。回転速度は標準速度のみです。
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10インチ(エプロン外周サイズ11インチ)
「12インチでは大きすぎるし、それ程のパワーは必要ない」でも「8インチでは小さすぎる」という場合に適しています。清掃幅は10インチ(フロアパッドは11インチ)ですが、パワーは8インチポリッシャーと同等で扱いやすいタイプです。ある程度の広さがあり、ひどい汚れではない場所を手軽に洗浄するにはピッタリ。回転速度は8インチと同様、標準速度のみです。
※オプションやアフターパーツの選択肢が他のサイズほど多くありませんので、その点をご理解いただいた上でご購入下さい
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12インチ(エプロン外周サイズ13インチ)
業務用途だけではなく一般的な用途でもよく利用されているサイズです。多くの場面で使い勝手の良い大きさで、この12インチを基準に検討するとよいです。バリエーションも多く、オプションの種類も豊富です。伸縮ハンドル、4段ペダル、超高速タイプなどもあります。
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14インチ(エプロン外周サイズ15インチ)
ビルメン現場では、洗浄幅や重量そして作業効率などを勘案しバランスの良いこのサイズが一番利用されています。12インチポリッシャー同様バリエーションが多く、伸縮ハンドル、4段ペダル、超高速タイプなどもあります。
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17インチ(エプロン外周サイズ17インチ)
体育館、集会所などの広くて障害物がない場所に最適です。サイズが大きくなると作業効率が上がるだけでなく、フロアパッドの外周部の速度(周速度)が速くなるため洗浄力も高くなります。ですが、大きくてパワーがあり取り回しし辛いため、操作に慣れていない人には不向きです。
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16インチ(エプロン外周サイズ18インチ)
体育館、集会所などの広くて障害物がない場所に最適です。サイズが大きくなると作業効率が上がるだけでなく、フロアパッドの外周部の速度(周速度)が速くなるため洗浄力も高くなります。ですが、大きくてパワーがあり取り回しし辛いため、操作に慣れていない人には不向きです。適応パッドサイズは2インチ大きい18インチ。
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2ブラシポリッシャー(7インチx2・6インチx2)
2つのブラシが左右対称に回転するため横振れがなく、誰でも簡単に使用できるというのが特徴。一般的なポリッシャーの約2倍の回転速度で清掃幅が合計14インチ(12インチ)ですが、本体重量が軽いため、洗浄能力は8インチポリッシャーより劣ります。
2️⃣ - 2️⃣ 次に回転の速さを選ぶ
ポリッシャーの回転数は、モーターの「速さ」か「トルク(パワー)」のどちらに力を配分するかということで変わります。車のギア比の概念と同じで『低速(標準速)だと力は大きいけど速度は出ない』一方『高速だと速度は出るけど力は弱い』ということです。カーペット洗浄やワックス剥離作業などモーターに大きい負荷が掛かる場合は『標準速』、作業効率を上げるためには『高速』が適しています。
◇ 標準速
初心者の方には高速タイプと比べて扱い易い標準速がおすすめです。またカーペット洗浄やワックス剥離作業、凹凸のあるエンボスシートやバーナー仕上げの石材の洗浄などモーターに高負荷が掛かる作業を行なう場合は、高速より標準速が適しています。
※ポリッシャーのタイプに関わらず、強い摩擦抵抗が掛かる状況では、モーター焼損に十分ご注意下さい
◇ 高速
作業時間を少しでも短縮したい、またカーペットなど高負荷が掛かる作業を行わないのであれば、高速タイプがおすすめです。標準速と比べ20%以上の回転数の違いがあります(但しそのまま作業効率に繋がるわけではありません)。
◇ 超高速
特別な場合でない限り、超高速タイプは必要ありません。しかし簡易的な磨き作業(本来はバーニッシャーを使用する)もできるということで利用価値は高いです。ポリッシャー操作に自信があり作業効率を重視するならこのタイプが適しています。
◇ デュアルスピードタイプ
カーペット洗浄やワックス剥離作業では低速、ハードフロア表面洗浄では高速、と2スピードを1台で切り替えて利用できるデュアルスピードタイプもあります。
2️⃣ - 3️⃣ タンク付きポリッシャーとは?
タンク付きポリッシャーのメリットは、洗浄作業中にレバーを引くだけで必要な量の洗剤希釈液を出すことができ、効率よく作業を進められることです。タンクが無ければ、床面に洗剤を撒くために、その都度ポリッシャーの電源を切って作業を中断する必要があります。
広い範囲を洗浄する際には不可欠で、特に少人数で作業するときに役立ちます。またタンク内の洗剤の重みがフロアパッド・ブラシをより強く押さえることとなり、洗浄効果も高くなります。さらにワックス剥離作業の際、塗布した剥離剤の乾きを防ぐため水をまく際にも、タンクがあれば便利です。
2️⃣ - 4️⃣ 無人回転が起こらないレバースイッチとは?
一般的なセンタースイッチでは、電源「入」の状態に気付かずコンセントに差し、ポリッシャーが勝手に動き出して「近くにあったものが壊れたり」「ケガをする」という事故が起こることがあります。
そんな事故を防ぐためにあるのがこの『レバースイッチ』です。これならコンセントに差しただけでは作動せず、安心して作業を始められます。また、とっさに電源を切りたい場合にも、レバーを放せば電源がオフになり安全です。特に操作に不慣れな初心者の方にはおすすめの機構です。
2️⃣ - 5️⃣ 最適な高さに調節できるスライド式フリーハンドルとは?
ポリッシャーを使用される方の身長や使用場所に応じてどの角度でもハンドルを固定できます。荷室の低い車への積載時にも便利です。
フリーハンドルが選べるポリッシャー
※「フリーハンドル」と「伸縮タイプ」は同時に選択できません
2️⃣ - 6️⃣ 伸縮タイプポリッシャーとは?
8インチ伸縮ポリッシャー
柄が伸び縮みする伸縮タイプポリッシャーは運搬性、収納性に優れています。ハンドルを直立させた状態で車に積載することができたり(車両荷室高による)、倉庫で保管する際の省スペースに貢献します。
また柄は任意の長さに調節できるので、身長に合わせて楽な姿勢で作業ができ、狭い場所の洗浄にも柔軟に対応できます。
8インチ伸縮(階段用)ポリッシャーには本体上部に大きい取っ手が付いており、階段など段差がある場所の洗浄作業にも適しています。取っ手を片方の手で握り、もう片方の手で短くしたハンドルを持って使用します。
伸縮タイプが選べるポリッシャー
※「伸縮タイプ」と「フリーハンドル」は同時に選択できません
2️⃣ - 7️⃣ 横振れしないポリッシャーとは?
一般的な1つのブラシが回転するポリッシャーでは、パッド(ブラシ)が床と水平状態にないとき、前後左右に振られる(引っ張られる)力が掛かります。その力が大きいほど、初心者の方には扱いづらいこととなります。そんな初心者にも扱いやすい、横振れしないポリッシャーが主に3種類あります。
①2つのブラシが反対方向に回転し、振られる力を打ち消しあうため横振れがないセーフティポリッシャーWP144やツーブラシポリシャーCPW-6、②円形ディスクタイプのオービタル振動式ポリッシャージャンピー、レディバード、③スクエアタイプのオービタル振動式ポリッシャービートmini miniシリーズ、ナノエッジ、スクエアナインがあります。
これら横振れしないポリッシャーは本体重量も軽く操作も簡単なので、日常的に気軽に使用したい場合や、普通のシングルディスクタイプ(円形回転式)ポリッシャーの操作に不安がある方には最適です。
3️⃣ ポリッシャーの使い方
ポリッシャーを操作するには少しのコツと慣れが必要です。基本的な動作の仕組み、適切な管理法を理解し、ポリッシャーを正しく使いましょう。
◆ポリッシャー三原則
ポリッシャーが回転している間、本体を水平に保つことで、前後左右に振られる(引っ張られる)力を抑え、それほど力を使うことなくその場にとどまることができます。
ポリッシャーの操作は回転する力を利用して前後左右に移動します。
ポリッシャーはメンテナンスを怠ると寿命が短くなります。必ず乾燥した場所に保管し、ブラシやパッド台は本体より取り外しておきます。
【動画解説】ポリッシャーの使い方 床メンテナンスマニュアル
見れば納得!わかりやすい!初心者のための、ポリッシャー操作、床メンテナンス資機材の解説
ポリッシャー使用上の注意・動作原理
ポリッシャーを使用する上で留意するべき事とメンテナンスや保管、動作原理について
4️⃣ その他ポリッシャー関連情報
ポリッシャー仕様比較
マシンを購入する際にはそのスペックが気になるもの。「ポリッシャー仕様比較表」で比較検討してみよう!
ポリッシャーQ&A
ポリッシャーに関する素朴な疑問、基本的な原理について「ポリッシャーQ&A」で確認しよう!